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悲しみは深く溝に埋め込まれている

もう数ヶ月も前の事。
保育園の帰りにBB弾(プラスチックのピストルの弾)を道で拾って、
その2はそれは大事に大事に握っていた。
その大きさ、その2の小指の先くらいの小さな玉で蛍光オレンジ色をしている。
拾ったところで、家には弾を詰めるピストルも無いしで使いようもないのだが、
なんだかとにかく嬉しいらしい。

しかし、子供のストーリーではおきまりのごとく、
家までもうちょっとという所でその2は転んで、その大切なお宝BB弾を手放してしまったのだ。

「あ!」

コロコロコロコロ・・・

小さな蛍光オレンジ色の玉は転がり、敷石の隙間にトンと落ちてしまった。

「あ”~~~~!!!」

その2、敷石の隙間に指を突っ込み必死に取ろうと這いつくばって頑張ったが、
子供の指ですら入らないような隙間であった。
黒い隙間の奥に蛍光オレンジが光る。

「あ”~あ”~あ”~」
悔しさのあまり泣き叫び、隙間をさしては「どうにか誰か取ってくれ」と涙で訴えた。
しかし、無理なのである。
諦めきれずにずいぶん長い間、泣いていたものだった。

あれから日々は過ぎ去り・・・
毎日の保育園の帰り道。
その敷石の所を通る度、覗き込んでは蛍光オレンジの光を確認する。
あまりに細い隙間にスッポリ挟まった玉は、誰にも取れず、雨にも流されずそこにある。
おかげでいつまでもその2のBB弾なのである。

最初の2~3日は、見る度に涙を流して「取ってくれ」と頼んだものだが、
さすがに今ではただじっと見つめるだけである。

無言で確認する。
でも忘れたわけじゃない。
通る度に悲しみを確認する。
でも今は悲しみだけじゃない、永遠の所有も感じている。